所有ギターの紹介

Juan と Hiroto のギター
師匠 Juan のギターと僕のギター(左側)、どちらも Antonio Marín Montero さん制作のギター
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目次

Mi guitarra – ミ・ギターラ(マイ・ギター)が手元に来るまで

スペイン語でギターは 「Guitarra – ギターラ」となる。クラシック・ギター であれば Guitarra Clásica – ギターラ・クラシカ、 アコースティック・ギターであれば Guitarra Acústica – ギターラ・アクスティカとなる。

他人の「趣味の話」ほど退屈なものはない、と親しい友人に言われたことがある。たしかに。以下長文なので、ギターに興味のない方にはごめんなさい。

僕は数年前から地元市役所が運営する Guitarra Flamenca – フラメンコ・ギター の教室に週 1で通っている。自慢する事ではないが、何年も通っているのに、情けないかなぶっちゃけまともに弾ける曲がない。リズム感の無さ、音感のダメさ悪さは救いようのない遺伝子を受け継いだようで(ご先祖さまの所為にするのは良くないよね😉、単に自分の¡努力不足!)、思うように上達しないが下手でもめげずに通い続けている。毎週木曜日午後の1時間のクラスは、僕には何よりも楽しみな時間だ。本来、一つの事をやり続ける事が苦手な性分で、ギターの練習を続ける為のモチベーションを維持させたり、アップさせたりする方法を探すのも正直苦労する。そんな性格なので、数年間もクラスに通い続けられている事は奇跡だ。忍耐強い先生やクラス・メート達のお陰でもあるが。単なる趣味のギターでも、続けていればいつかそのうち、一曲くらいはまともに弾けるようになる日が来るだろう、と信じて厚かましくクラス通いを続けている。それと自分では弾けなくても、感性が鋭い人や上手な人が目の前で弾いてくれるギターの音色は、耳に堪らなく心地良い。

今回は僕が愛用しているギターがどのように手元に来たかを紹介させて頂こう。

マエストロ(師匠)・フアン – Maestro Juan のギター

僕たちがギターを教えてもらっている先生(師匠)フアン が、グラナダ – Granada のギター工房で注文した際に、そしてギターが出来上がりピックアップした際にもお供させて頂く機会に恵まれた。先ずはその時の写真からご覧頂こう。ギターを依頼した工房は、グラナダの Antonio Marín Montero – アントニオ・マリン・モンテーロさんという方の工房だ。昔からグラナダには数多くのギター工房があることで有名だ。その数あるギター工房の中でも様々な理由から一際人気の高い、世界中に多くのファンを持つ、アルハンブラ宮殿のそばにあるギター工房だ。アントニオ・マリンさんのお名前は、クラシック・ギターやフラメンコ・ギター好きな方なら、日本でもお馴染みかとも思う。

師匠のフアンは、数年前既に Ciprés – シプレス(シープレス又は糸杉)のギターをアントニオさんに作ってもらっていて、めちゃくちゃ気に入り、この時は2本目の制作依頼となった経緯がある。フラメンコ・ギターの世界では Ciprés – シプレス(シープレス 糸杉)で作られたギターを Guitarra Blanca – ギターラ・ブランカ「白」と言う。上記写真のこの時に依頼したギターは、スペイン語で Palosanto de Río – パーロサント・デ・リオ(日本語ではハカランダ又はローズウッド)という種類の木材を使ったギターで、フラメンコ・ギターでは Guitarra Negra – ギターラ・ネグラ「黒」と呼ばれる。

Antonio – アントニオさんにギターを依頼してから、師匠のフアンは、マニルバ(Manilva)のスイート・ワイン手土産に(アントニオさんのお気に入り)工房に何度も何度も足を運び(多い時はほぼ毎月のように)、工房近くのバルにアントニオさんを連れ出しては長話しに興じていた。勿論飲みながらだが。この間、僕も幾度か工房にお邪魔する機会があった。いつだったかお邪魔した際には、複数の日本の大手楽器店(御茶ノ水の K 楽器さんとか)は勿論日本の個人の方からも、そして世界中から沢山のオーダーを受けている、と話てくれた。主にクラシック・ギターの注文が多いそうだが、制作途中の Modelo Bouchet – ブーシェ・モデルや特別モデルのギターを見せて頂いたりした。日本とは古くからご縁や繋がりがあるそうで、色々なお話を聞かせて頂き本当に貴重なお時間を共有させて頂いた。そして注文から4年後、2019年12月の中頃だったか、ギター完成の連絡がフアンにあり、再度僕も誘われ同行する事となり、下記はその際に撮した写真となる。

僕らの師匠 Juan が特注したスペシャル・モデルのギター。こうやって時々クラスにも持ってきてくれる。生徒さん達に、アントニオ・マリンさんの話しやグラナダの工房に限らず、コルドバ、マドリッド等各地の工房などの話も聞かせてくれる。生徒の皆んなにも実際に弾かさせてくれる。iPhoneで録画しそのままアップしてるので音質がそこそこなのが残念。

先月から今期のギター・クラスがスタートした。上の動画はクラスの最中に自分たちのお手本用にスマホで録画したものだ。そしてこの曲は、僕らのクラス(計3名)に与えられた課題曲で、今練習中の「Rondeña – ロンデーニャ」というテーマの曲だ。師匠フアン自身が録音(自宅スタジオ)した曲をバックに流して弾いている。Cante-カンテ(歌)はダニエル・ルイス君という地元サン・ペドロでは有名なイケメン君だ。伴奏もまぁ難解で難しいのだが、曲の間奏部分も更に複雑だ。だけど先生オリジナルのファルセータ(フレーズ)がおしゃれな感じで気持ちが良い。エンディングはエンリケ・モレンテさんの「Adios Málaga La Bella」(アディオス・マラガ・ラ・ベージャ)という美しい曲のアレンジで閉められる。でもアレンジは現在進行形、まだ出来上がりではない。きちんと完成した曲を、またいつかの機会にアップ出来ればと思う。ギターのクラスの雰囲気は毎週こんな感じだ。

余談だが、師匠フアンは、今 アントニオ・マリンさんの工房では「3本目」となる Arce ojo de perdiz – アルセ(メープル材)の板のギターをまたまた作ってもらっている。もうすぐ出来上がる予定らしい。これもとても綺麗な美しい板が使われているので、完成したらまた紹介出来ればと思う。

参考までに、グラナダ – Granada のギター、そしてグラナダのギター工房について興味のある方は「La Escuela Granadina de Guitarreros- ラ・エスクエラ・グラナディーナ・デ・ギタレーロス」(スペイン語・英語版)という書籍がおすすだ。クラシック・ギターがお好きな方、是非ご一読を。

僕のお気に入りで、Granada – グラナダで作られているクラシック・ギター&フラメンコ・ギターを紹介している本をもう一冊紹介しておこう。Orfeo MAGAZINE というフランスの出版社が編集している雑誌だ。写真がものすごく綺麗で解説も詳しい。そしてPDF 版だと、誰でも無料で閲覧可能だ。この Orfeo Magazine #8 – English Edition – Autumn 2016 (2016年秋の第8号)で、グラナダのギター工房を特集している。勿論アントニオ・マリンさんの工房も紹介されている。僕はフランス・パリの出版元 CAMINO VERDE 社で綺麗に製本されたスペイン語版をオンラインで購入した。宝物だ。フランス語版、スペイン語版、英語版がある。

書籍ではないが、各方面で「生ける伝説」と呼ばれる Antonio Marín Montero – アントニオ・マリン・モンテロさん、これまでのギター作りへの情熱と偉業を讃え、彼の名前を冠した Luthier – ルシアー「ギター製作者」の方々の為の「CONCURSO INTERNACIONAL DE CONSTRUCCION GUITARRAS “ANTONIO MARIN MONTERO” Antonio Marin Guitar Making Competition」という大会が2017年からグラナダで毎年開催されている。回を重ねるごとに参加者も増えているようで、素晴らしいギターを目にする機会でもある。興味のある方はホームページの方をご参照ください。

僕のギターが手元に来るまで

さて、師匠フアンのお陰で、グラナダに(マルベージャからグラナダ迄約180キロ、車で2時間半くらい)行く度に、何度もアントニオさんの工房にお邪魔する機会に恵まれたり、彼(Juan)のギターを手元に預かり自宅で触り倒したり、気の済むまで弾かせてもらえる時間に浸れたり、アントニオさんやホセさん達(お弟子さん達)とまったりとお話をする機会を何度も持つと、そりゃぁ僕みたいなギターの素人でも、彼らにギターを作ってもらいたくなってしまうのは自然な流れというか、工房にお邪魔する度に、なんだか「お前はいつだ」みたいな感じの視線も痛く感じ(僕が勝手に感じただけだと思うが)、ついに自分のギターを作ってもらうべく、お願いする事を決断する。ギターが好きなだけの音楽素人の僕には、何とも恵まれた夢のような話で、彼らの工房でギターを作って頂けるご縁に恵まれた事にも感謝の思いがある。それとやっぱり、個人的に収入もない先の見えないこの時期・タイミングで、趣味如きに散財した僕に理解ある妻へ「心から感謝🙏」。

アントニオさんの工房でギターを作って頂くために、彼らの注文票ノートに記帳して来たのは 2020年02月21日だった。ギターになる木材に実際に触らせてもらい自分で板を選び、好みのデザインのサウンドホールのロゼッタやペグ(糸巻き)を選んだり、アントニオさん達の目の前で、実際に弾いてるところを見て頂いたり、自分の好みのギターの話をする時間は、なんか夢のようだった。自宅に戻ってからも現実感に乏しかった。出来上がるまで大きな楽しみが一つ増えた事もそうだったが、気持ち的にはのんびりと「数年待てば良い」という思いも強かった。待っている時間も楽しかった。

そしてこの年の2月は、Covid-19 – 新型コロナのパンデミックの騒ぎが始まる直前だった。スペインはこの後、3月14日に政府が緊急事態宣言するに至り、国中をロックダウン、県外へは勿論市外への移動も禁止される非常事態への突入となった。街が封鎖された3月、4月、5月、そして6月半ば迄街中や市内の様子は一変した。警察車両が街中を巡回し、道路のあちこちに検問のバリケードが作られ、外出が自由に出来ない非日常が続いた。テレビのニュースは、感染者が爆発的に増えて行く様子を終日、連日伝えていた。そんな非現実的に思える毎日だったが、スーパーや食料品関連のお店は営業していて商品も豊富にあったのは有り難かった。食料の買い出しや日常の生活には何の支障もなかったのが本当に救いだった。あの時、医療関係者の方々は勿論だが、良く分からないウイルスへの感染リスクと隣り合わせの中、生活必需品等を確保し通常通りにお店に並ぶようにと、命懸けで仕事をされていた人たちは本当に凄いと思った。感謝しかなかった。我が家には犬がいるので、少なくとも犬と一緒に近所を外出する事が許されたが、陽が落ちると道路には車の往来もなくなり、人の気配も消え、静まり返った市内の何ともいえない雰囲気は、今も記憶に刻まれている。普段そして今まで考えもしなかったような事が色々と頭の中に浮かび、スペインに住み始めて数十年経った中で、あの時ほど、日本を遠くに感じた事は無かったかな。

また話が脱線したが、2020年10月の中旬、思っていたよりも全然早く「ギター出来あがったから取りにおいで〜」の携帯への連絡を受けびっくり、というか、心の準備が出来ていないのにスマホが鳴りちょっと動揺気味だったのを覚えている。完成までは数年かかると信じていたもので。先ずはとにかく皆んな元気でいてくれて心から良かったと思った。そしてその時は本当に嬉しかった。6月20日に政府が緊急事態宣言を解除、そして徐々に車での市外や県外への移動も認められるようになってきたのが夏も過ぎてからだったかと記憶している。そんな世間の微妙な状況の中で、グラナダ辺りまで車での遠出も8ヶ月振りの事だった。なのでギターを引き取りにアントニオさんの工房目指して、グラナダへ車を走らせた日は、道中ちょっとした緊張感もあったので本当に思い出深い1日となった。

あの日 Juan さんによる工房での試し弾き。出来あがって受け取ったばかりのギターの音。曲は彼のオリジナルのアレグリアスのイントロ部分から。表面を叩かないように遠慮して優しく弾いてくれている😂。

工房で初めてこのギターを受け取って、左手でネックを支えギターを抱え右手で弦を弾きおろし際に驚いたのが、その低音弦のテンションの心地よさだった。外見は師匠のフアンのギターと双子のようなすごく似ているギターに見える。だが実際には、細かいところで色々と違いがある。僕の弾き方はプロの方達のように力強くない。右手や特に親指の弦へのアタック感は、師匠のフアンとかと比べるとはるかにひ弱い。そんな僕の手に優しいテンション感が嬉しい、弾きやすいギターとなっていた。本当にありがたい事だ。このギターと巡り逢えた事に心から感謝。

最後までお読み頂きありがとうございました。

ではまた。

追記:正直、いつの日かは自分で弾いた動画をここで紹介出来るようになりたいと思っている。が、ヘタ過ぎて勇気がない。自分の動画がアップ出来るようになる事を目標に練習がんばろっ、と。

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